感覚的音楽理論入門 楽典「実際の音で学ぶ 和音」
感覚的音楽理論入門 楽典は最終回となりました。今回の記事は和声に入る前の準備となりますので、主として練習の仕方と書籍選択について書きます。過去には書籍にあることを重複して書いておりましたが、あまり必要とされていないのではないかと考え、項目該当ページのみお知らせします。書籍は音楽之友社の「楽典 理論と実習」です。他にもたくさんの書籍がありますが、とりあえずはこの1冊で十分です。
入試問題についても、中の例題を研究することによって、対処できます。これは数十年前に難関音楽高校の受験を経験した方々に伺ったところ、同意見でした。むしろ、現代の入試対策問題集は易しいと言われておりました。今も昔も変わっていないのかと思いました。

3和音・7の和音
どちらも音階の構成音上に成り立つものです。ですからまず、音階を全調で楽に弾けるようになることが第一歩となります。次に I度 IV度 V度の主要三和音。まずこの3つを全調で弾けるようしましょう。
7の和音で重要なものは、V7(属七)。VII7は属7の仲間ですので、属7をクリアしてからしくみを勉強しましょう。その前にV7→I度を全調で弾けるようにしてください。考え込んで弾くのではなく、指で和声を探るように。
- 全調で音階を弾けるようにする。短調は和声短音階を中心に旋律短音階も。
- 主要三和音を全調で弾く。
- V7→I度を全調で弾く。(下記楽譜のように)

和音の構成音

和音の種類

上の記事にもありますように、和音は耳で種類を判別することが一般的であり、良き方法です。どうしても無理なら、五線上で見分けることが必要となります。いずれにしても、和音を聴くことが鍵となりますので、ピアノ楽譜のみならず、スコアを見るときは音を出すことを習慣づけましょう。
和音の表記
通奏低音(数字付バス)とローマ数字による表記があります。加えて芸大和声と呼ばれる書籍に対応した、日本固有の表記があります。
- 楽典 p142〜143にかけて参照。
- 通奏低音については、「和声 理論と実習」のIII巻P418〜 わかりやすく記されています。
芸大和声の表記は、転回形に特徴があります。
I度の第一転回 I¹ (転回の数字をそのまま記載します。)
和音の機能(カデンツ)
いくつかの和音が組み合わさって、文章で言うところのセンテンスとなります。この組み合わせをカデンツと呼びます。カデンツを組み合わせるにあたって、和音の機能を生かします。
| 和音機能 | 該当する和音 |
|---|---|
| トニック(T) | I Vl III |
| サブドミナント(S) | IV II |
| ドミナント(D) | V III VII |
カデンツの種類はT-D-T T-S-T T-S-D-Tの三種類です。
終止
文章と同じく、音楽にも句読点にあたるものがあり、終止と呼びます。終止は変形されて用いられることもありますが、根幹になるものは、下4つです。
下記の和音進行は終止以外にも使われていますが、終止としての意味を持つのは、句読点として使ったときのみです。
| 終止の種類 | 和音は? | 文章にたとえると? |
|---|---|---|
| 全終止 | V→I | ピリオド |
| 半終止 | V | コンマ |
| 偽終止 | V→Vl | コンマ |
| 変終止 | IV→I | ピリオド |

1小節目は基本形に解決せず、第一転回形へ、2小節目はソプラノが主音ではなく、第三音に解決しています。このように曖昧な雰囲気をもつ終止を不完全終止といいます。対する完全終止とは、上記の表にありますように、V度 I度共に基本形で、且つソプラノが主音で終わる、言い切った形の終止です。
古い和声課題の実施
大和声学教程のバス課題、7の和音の課題を実施してみました。和音記号は書かれています。それを芸大和声の記号に振り直しました。
2小節目、属7の第7音の処理ができません。本来なら2度下に進ませたいのですが、そうなれば、次のI度と連続8度になりますし、7音2度下行とバスが3度下がるという最悪の同時進行ができてしまいます。
仕方なく、7音を2度上げました。内声でもあることですし・・・
4小節目、属7の第2転回形を使う指定となっています。この指定では低音4度が確実に出来てしまいます。

次に2小節目の3.4拍目のみ、和声を変更してみました。

3拍目の属7をV度に、4拍目を属7に変更。これで何とか、7音2度下行とバスが3度下がるという最悪の同時進行からは脱しました。
4小節目の低音4度は相変わらず鎮座しております。全ての和声を、変更してみました。

和音記号A)は芸大和声の表記、B)は楽典 理論と実習の表記(数字付き低音)です。
この作例では根音省略形の属9=VII7 しかも準固有和音を使い、横の流れを滑らかに。4小節目の低音4度を属9というクッションを噛ませることによって、逃れました。
ソプラノを変更しました。
全体的に柔らかな雰囲気になったと思います。
この課題は初歩の段階であり、属7以外の和声については無頓着で良いのかもしれません。しかし、長年音楽に触れている者にとっては気になる部分が多く、大和声学教程の課題を初心者が手がけても、和声感覚は磨きにくい印象を受けました。
勉強の段階に応じた書籍選び、先生選びを慎重に行うべきだと思いました。知り合いは3回も芸大和声をやり直ししたそうです。そのような事態に陥らないためにも、エクリチュールに秀でた先生につくことが大切だと思います。
和声の勉強の方法
最初は芸大和声から入り、途中で新しい和声を併用する方法が良いと思います。
ちなみにわたしが和声を勉強していた50年ほど前は、先に書きました大和声学教程という書籍からスタートしました。数字付き低音と和音記号を併用した書籍でありましたが、こちらの例にありますように、初心者には難解な印象がありました。
新しくついた先生に「大和声では役立たないから、こちらをやるべき」と勧められたのが芸大和声でした。この先生も大和声教程のみを勉強なさったと思いますが、時代に応じて勉強方法を変えていくべきだとの示唆であったと思います。
芸大和声であれば、3巻全てをやるのに、早ければ6〜10ヶ月、遅くとも1年くらいで仕上がるでしょう。もし3巻の途中でつまづくようなことがあれば、進路変更を考えた方が良いかもしれませんね。しかしこれはプロフェッショナル志望対象の考え方。
音楽愛好家ならば、ゆっくりと楽しんでいけばよいのです。
おすすめの書籍
下記5冊はまとめて買っておくと良いです。勉強の順番は上段の3冊を徹底的に追求し、次に下段のシャランの和声課題集をできるだけ進めることです。ちなみにシャランはAとBで一組になっているので、一気に2冊買うことをお勧めします。





機能和声をマスターしてから

先に芸大和声と言われる、赤・黄・緑の3巻をしっかりマスターしておけば、理解度が深まります。ご自身の言葉で言い換えて、理解することができ、たとえ芸大和声のシステムに則っていない和声進行が出てきても、いたずらに不快感を覚えることはないと思います。
少し前にこの書籍に準拠している?と思われる芸大楽理科の副科和声の入試問題を解いてみました。バス課題は通奏低音の表記となっておりましたが、非常に簡単でした。楽典 理論と実習にある、基本形(5と表記があったり何も書かれていなかったり)6の和音、46の和音、あとは#などの臨時記号、ナポリ ドリアの和音・・・加えてバスに合った魅力的で流麗な旋律が描ければ満点だと思います。
芸大和声とは方法は違っていますが、全くべつものではなく、むしろ正解、不正解の間にある曖昧な醍醐味を感じることが、和声感覚を磨くための修練ではないでしょうか?学問ではありませんので・・
和声学という言葉は使うなと、高校生のときにお叱りを受けたことがあります。今でもその言葉を覚えており、わたしは全てを勉強として片付けてしまうことに、違和感を感じます。
その意味でも、この書籍を勉強することは、音楽に潤いを得られるきっかけとなるかもしれません。


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