感覚的音楽理論入門 楽典「実際の音で学ぶ 全音階と調 調の関係性と転調〜後編」

近親調と遠隔調の意味、転調、ほんの少し和声について、実際の楽曲を元に説明いたします。加えてソナタ形式、曲の発展の方法などについても手短に書きます。

転調、ソナタ、曲の展開については、後日改めていくつか記事にします。

初心者の方にとっては、今回の内容は多少難しいと感じられるかもしれませんが、ご自身が「書く」ようになれば意味がつかめてくることでしょう。

盛りだくさんな内容のようにみえますが、断片的に勉強していても何一つ前に進みません。次にやるべき勉強のための準備をする必要があるため、書くことが多くなっています。ご容赦くださいませ。

目次

近親調と遠隔調

調性の関係について説明します。

近親調とは?

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前編にも音階の共通音について触れました。共通音が多い音階は近い関係であるため、転調や借用をしても、ガラリと変わった印象を受けません。このような印象を伝えたい時には、近親調を選びます。

上の図はC-durを主調(原調)とした近親調の関係を表しています。

平行調

同じ調号をもつ調性を指します。

言い換えれば

主音どうしが短3度を形成する、長調と短調です。

例)C:の主音c a:の主音a

属調

主調の属音を主音とする調性を指します。

たとえば・・

C-durの属調=G-dur g-mollの属調=d-mollのように、主調と同種の調長調は長調、短調は短調)を指します。

下属調

主調の下属音を主音とする調性を指します。

たとえば・・

C-durの下属調=F-dur c-mollの下属調=f-moll のように、主調と同種の調長調は長調、短調は短調)を指します。

同主調

同じ主音をもつ長調と短調を指します。

たとえば・・

C-durとc-mollの組み合わせです。

以上が主な近親調です。他に、近親調から派生した属調・下属調が使われる場合も多々あります。詳しくは近親調の図をごらんください。

近親調の図の中で、 で囲まれている調が近親調から派生した調性です。

遠隔調とは?

近親調以外の調を指します。

たとえば・・

C-durに対してAs-dur Es-durなど。このような調への転調は、3度転調という手法を使うことが多いです。がらりと雰囲気を変えたい場合に効果を発揮します。他にエンハーモニック転調もよく使われます。この転調は異名同音を使う方法です。

例題

1)次の音を主音とする、調性の調号と調名を書いてください。

答え  左の をクリック

2)次の音をもつ調性を書いてください。尚、短調の場合は和声短音階の構成音としてください。

答え  左の をクリック

第4音 Fis-dur fis-moll 

第7音 Es-dur es-moll

属音 B-dur b-moll

下属音 B-dur b-moll

第2音 Fis-dur fis-moll

クレメンティソナチネop36-1〜転調と和声・ソナタ形式について

今回はクレメンティのソナチネOp36-1 1楽章を使い、転調や展開の方法、和声について触れていきます。

曲の構成

提示部

  • 1テーマ C-dur 1〜4小節
  • 提示部の展開部(つなぎ)5〜8小節目の頭の音(G)まで
  • 2テーマ G-dur(属調への転調) 8〜12小節目の頭の音(D)まで
  • 提示部のコーダ 12〜15小節

展開部

16〜23小節 c-moll (同主調への転調)

再現部

24小節目〜最後まで。C-durに戻ります。

ソナチネという形式はソナタの小規模なものです。小規模ながら、展開部では、1テーマの材料の受け渡しやら、2テーマの発展のさせ方に、学ぶべきところがあると思います。展開については、黄緑が1テーマの材料オレンジ色が2テーマの材料となっています。

転調は主調→属調→同主調→主調と動きます。(近親調への転調です。)加えて1テーマは、主音と属音が中心となっており、展開部にも常に属音が流れています。V→Iの習得のために書かれているのかもしれません。

調性と和声の関係

楽譜にほんの少し和音記号を書いてみました。

属調、同主調に転調する場面では、ドミナントから入っています。ドミナントとはV (V₇ V₉)を基本とした和声で(他にIIIなどもドミナントとしての使用法がありますが、今のところは触れません。)機能和声を用いた楽曲では必ず使用される和声です。

ドミナントの他には、トニック( I VI )サブドミナント(IV II)があり、それぞれの性格によって使い分けます。

ドミナントは緊張感を高める性質を含んでおり、解放を求めて、トニックのI度に進みます。また同じトニックでもVI度に進む場合は、疑問を感じさせたり、もう少し曲を続けて解放の時を後にもっていきたいなど、場面に応じた使い分けをします。

このように和声の勉強とは、和音の並べ方を知るだけではなく、創作をしていく上での感覚を養う意味もあるんですね。ですから、天才以外はエクリチュールの勉強を正統的な指導者について学ぶ必要があると思います。

宮之島しろ先生

勉強をして損をすることはありませんよ。

Youtube音源

80代後半?の長井充先生の演奏です

80代の長井先生の演奏をおすすめします。テンポの揺れはあるものの、この曲の良いところを生かされているかと思います。お家が狭く、電子ピアノしか置けない環境でずっと練習されていたようです。

モーツアルト「ウィーンのソナチネ1番」

クレメンティはモーツアルトと同時代の人だったようです。この曲はクレメンティのソナチネのモティーフと似ています。似てはいますが別物です。モーツアルトのほうは、メリハリがはっきりしていて、「ここからがコーダですよ、2テーマに移りますよ、すぐ前の材料を使ってつなぎます」など 音が言葉がわりになっているような印象をうけます。

1テーマと2テーマの対比についても明確です。

オレンジちゃん

この曲ならお手本にできそう。

宮之島しろ先生

そうだね。オレちゃんのような小さな子にもわかるように書いてあるものね。

オレンジちゃん

クレメンティはなんか練習曲みたいだしもう飽きたから、今度はモーツアルトのソナチネを料理してほしいです。

宮之島しろ先生

わかりました。ソナタについてやるときに、この曲を引っ張り出してくるね。それまでお家で譜読みしておいてね。

しばらく和声に入るまでのお勉強を記事にしますね。よろしくお願いします。

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