感覚的音楽理論入門 楽典「実際の音で学ぶ 全音階と調 前編」
この記事では音階(全音階)の構成音、調との関係について説明します。前回のシューマン「君は花のように」の借用和音について、初心者の方も理解できるようになるかもしれません。


全音階以外には、教会旋法などよく使われるものをとりあげます。他の音階については、下の書籍をごらんください。

指導者の選び方は、下記記事にあります。記事では、指導者を探す方法までは記していませんでしたので、改めて記事にいたします。

全音階の種類と構成音
全音階には長音階、短音階があります。短音階には、自然短音階・和声短音階・旋律短音階の3種類があります。長音階には特殊な例として和声長音階というものがあります。
この記事では、音程についての記憶が曖昧な場合、理解できないこともあると思います。その都度該当記事をリンクしますので、確認してくださいね。
長音階

これはC-durの音階です。鍵盤図をみながら再度知識を確認してみましょう。ミとファ、シとドは短2度(鍵盤の数は2つ)、他は全て全音(鍵盤の数は3つ)です。
Dur(長調)においてはこの音程関係は共通です。何調でも同じです。

音階の下にI II III・・・とローマ数字が書かれています。これは音階の構成音を表します。たとえばVIIならば、音階の第7音と呼びます。
構成音の中でも大切な音はI=主音 IV=下属音 V=属音 VII=導音です。下属音は主音の完全5度下、属音は主音の完全5度上です。
上の譜面はC-durとc-moll(和声短音階)の音階です。同じ主音を持つ調(同主調と呼びます)においては主音、下属音、属音、導音が共通です。この中で特に大切なのが、導音です。導音とは文字通り主音に導かれる音。導音と主音の音程は短2度となります。
長調と短調(和声短音階)では異なった導音である、と間違って覚えている方はかなり多いです。うろ覚えであった方は、この記事をきっかけとして記憶を確かなものとしていただきたいと思います。
和声長音階

長音階の第6音が半音下がります。音階を単独で使うというよりは、和声(同主調の和音を借りる)の構成音としての使用例が多いように思います。
下記の作例をごらんください。小さな ○ がついているのが同主調の和声(C-durならc-moll)です。(これを準固有和音と称しています。)実際の曲でもこのような使い方が大半であると思います。

短音階
短音階には3種類あります。中学校の音楽の授業でも習ったことでしょう。何を今更と思われるかもしれませんが、再度説明します。
自然短音階

自然短音階とは、同じ調号をもつ(同主調)長音階の第6音から始まる音階です。第7音と主音との音程は長2度ですので、導音ではありません。導音とは主音との音程が短2度を形成するものです。再度下記リンク先の該当部分を読んでみてください。
https://chiron-shop.astro-music.link/?p=2345#index_id1
和声短音階

和声短音階の特徴は、第6音と第7音の音程が増2度であること、自然短音階の第7音が半音上がり、導音となることです。何度も書いていますが、導音は主音に導かれる特徴をもっています。
旋律短音階

旋律短音階は上行形と下行形が異なります。上行形は和声短音階の第6音が半音上がり、6音と7音の音程は長2度となります。下行形は自然短音階と同じです。

調性と調号

上の図は5度圏の表です。外円=長調 内円=短調を表しています。
外円のC:から右側に向けて。調号の#が1個づつ増えるたびに、主音は完全5度上に移動していますね?次に、同じくC:から左側に向かってください。調号の♭が1個づつ増えるたびに、主音が完全5度下に移動していますね?
円の下側にCis: Des: Fis: Ges:・・と2個調性が書いてありますが、これは異名同音を表しています。As:の完全5度下はDes: Fis:の完全5度上はCis: des(dに♭)とcis(cに#)は同じ音ですが、表し方が違うわけです。これを異名同音と呼びます。
内円について。短調も長調と同じく、#♭が1個増えるたびに、主音が完全5度上下していきます。
調号の数を忘れたときには、この表をみてください。
調性の数を数えましょう。合計24調となります。異名同音の調性は同じ音ですので一つに数えます。確認してください。

練習方法
音階を自由自在に操れることが、和声の勉強の土台となります。和声を勉強し始めたものの、音階の知識が曖昧なために、初歩の段階でリタイアしてしまう方は、大勢いらっしゃいました。
そこでL’Atelier du Chironでは、和声の勉強に入る前の基礎固めとして、譜面を見ないで、音階全調をピアノで弾く(鍵盤楽器がベスト)課題を必ず出しておりました。ハノンの音階は4オクターブですが、1オクターブのみで、しっかり音と音名のつながりを覚えていただきます。

机上で眺めているより、弾くことによって脳へのインプットが確実なものになります。初心者でも何度かやるうちに、間違えなくなります。
音階が完璧であれば、主要三和音を押さえる練習も容易になります。和音の構成音=音階の構成音であるわけですから。つまり何となく押さえていることを、頭で整理することにより、確実性が増すことになります。
「君は花のように」借用和音のこと

前々回の記事の中に、「君は花のように」の借用和音について書きました。下図にある調性は近親調と呼ばれます。近親調とは、主調の音階の構成音に共通音が多く、関係性が深い調性です。次回はこの近親調と遠隔調について、加えて平易な問題も含めて記事にいたします。

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